ガンディーニのクアトロポルテ(その32:トランスミッション)
このガンディーニのクアトロポルテねた。ようやく、エンジンのお話がだいたい終わりましたので、お次は駆動系の要、トランスミッションのお話をいたしましょう。
ガンディーニのクアトロポルテは、正規輸入されたディーラー物では、ほぼ全数といってよいほど、オートマティックトランスミッション装備車です。ディーラー物の極々少数台と、並行輸入車の一部に6速マニュアルトランスミッション装備車が存在いたします。
まず、独ゲトラーク社製、6速マニュアルトランスミッションについてご説明いたします。従来のビトルボマセラティに積まれ、脆弱と評判(?)だった、ZF製5速ミッションやゲトラーク製5速ミッションに較べ、飛躍的に耐久性が上がっているとは云えましょう。ゲトラークミッション独特のなめらかなタッチで、「コクッ、コクッ」と爽やかにシフトを楽しめます。マセラティ車伝統の(?)エンジン特性に比していささかローギアードぎみな1速、2速では、瞬間的に吹け上がってしまいますので、レーシング走行のようなハードな使用法を続けますと、デファレンシャルギアやドライブシャフトも含めた駆動系統が早期にガタガタになります。ぜひ、ジェントルに走るクセを身につけましょう。良質なギアオイルを入れ替えながら、じっくりと調教していくのも大切です。また、クラッチのレリーズベアリングやレリーズシリンダーはクラッチ板交換時に必ず交換しましょう。ホントはフライホイールも交換したいのですが、非常に高価につきますので、表面研磨をすれば大丈夫でしょう。但し、クラッチ板の当たり面を完全に喪失し、走行不能状態までイッてしまったものは、フライホイール表面が金属同士の摩擦熱により、「焼き」の入った状態になってしまいますので、表面研磨加工が難しくなります。「そろそろだな」と思ったら、早めに対処した方がよさそうです。また、このゲトラークミッション(5段・6段ともに)は、ギア欠けや、内部のベアリング不良などの内部トラブルが発生した場合、一切の修理が不可能です。メーカーから、内部パーツの供給が一切行なわれず、また、特殊なシャフト組み立て工法を使っているため、大型のプレス機と専用治具が必要で、ドイツ本国のメーカー送りにする以外の手立てはありません。ゆめゆめ、手荒に扱うコトは止めましょうね。
次に、オートマティックトランスミッションのおハナシ。
ガンディーニのクアトロポルテV6車の非エボモデルは、すべて、ZF製の4速AT「4HP22型」を採用しております。これは、デ・トマソ期の222や430時期のものと同一の製品と思われ、互換性はあります。この「4HP22型」は80年代後半から、90年代中盤まで、広く欧州車に使用されていたものですが、マセラティ用のものは、内部がその強大なエンジントルクに耐えるように対策してあるそうです。このミッション自体は適切なATF(オートマティックミッションフルード)管理さえしていれば、非常に丈夫な部類といえ、通常寿命は12万キロ弱程度だと思います。極々まれに、そこまでモタナイものもありますが、その多くはオートマクーラーホースのオイル漏れをホッタラカシにしていた場合にみられます。この時期のクーラーホースは非常に耐久性が低く、カシメ部からのオイル滲みが比較的に早く訪れます。また、ディーラーにおけるこのホースの部品価格設定が、ある時期非常に高価で、かつ品薄であったのと、加えて、その交換には、ミッション本体をエンジンごとずらす工程が必要なことから工賃もバカにならないため、泣く泣く交換を諦めていたユーザーも多かったコトでしょう。整備履歴がピリっとしない個体は、ここがネックになるかもしれませんね。とはいえ、この形式のミッションは、国内に存在するZF社の正規代理店で、メーカースペックの完全リビルドが可能ですから、部品供給、信頼性の点では抜群です。リビルド費用も脱着工賃込みで「2ケタ万円半ばから後半」くらいのリーズナブルプライスで出来るでしょう。但し、費用は、いわば「時価」(笑)ですから、必ず、見積もりの上、コトにあたってください。
リバースギアに入れた時に「ゴロゴロ」と振動が床下から響くモノが時折ありますが、まずはミッションマウントラバー(4個)をすべて交換してみます。それで治ればOK。ダメな場合は、ミッションの内部ダメージを疑います。
最後に、エボV6と、すべてのV8車に搭載されている、新型のオートマティックミッション。キックダウンを電子制御で行います。BTRエンジニアリング(オーストラリア製:オーストリアではないので念のため。よく間違って記載されています)リミテッドという会社の製品です。
シフトチェンジの際に「ゴクッ」という、ちょっと不気味な触感があるのが特徴。ZFのミッションと較べて、ミッションマウントの設計がしっかりとしているので、「剛性感」はありますが、それゆえ、シフトアップ&ダウンのショックの出方は(特にV6エンジン車では)ZFに比して一歩譲るかな。まあ主にV8エンジン車に採用しているのは、アクセルのON&OFF時のトルク変動の相性の問題でそうなってるのかなと思います(実はエボ期はほとんど、V8が載っかってるんです。V6の製造台数は、エボ全数から見れば極々わずか:なんでダロ)。この形式のミッションは、なんでもBTR社がツブれたとかで、今後、なんらかの抜本対策が必要です。当店でも鋭意研究中ですが、万一の場合、当面は良質な部品取り車からの換装で凌ぎます(現在も在庫あり)。まずは、ご安心ください。
エボV8のミッションに貼り付けてある、BTR社のラベル。マセラティの純正部品番号も入ってます。見えねえか(笑)。
これが、下部から眺めたBTRミッション全景です。近代的な見た目になってます。
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コメント
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MT好きなんで、5MTのビトルボにとびついちゃいましたが、
MTはちょっと神経つかいます。
シフトチェンジは慎重に、一旦ニュートラルに入れてから優しくギアを入れます。この間、約1秒半。
やっぱり祈りは必要ですね。
ところで、真っ昼間からブログを大量に更新されるようになっちゃってますけど、お仕事は大丈夫なのでしょうか?
投稿: Ryo | 2008年9月26日 (金) 12時59分
4Vのシフトは実に気持ち良く決まる。昔の911のように回転を合わせてあげなければこの気持ち良さは味わえないが、弱かろうがなんだろうが気持ち良ければいい。上げる時はズバズバと、下げる時は忙しく右足を動かしながら。まるでチューニングカーのようなシフト。恍惚とし、よだれが垂れそうになりながら、きっと岡本さんが見たら顔をしかめる運転をしています。九州はいいところです。こんなことしても免許がまだあるから。
投稿: りゅたろう | 2008年9月26日 (金) 21時56分
5速MTのビトルボ系、一台乗りました。
確かZFのはず。コクッとは入りませんが、シクッと入ります。(この違いわかる?)
決して気難しいシフトでは無かったですね。
でも大抵ダブルクラッチ使ってましたが…
クラッチはギブリカップよりやや軽い位の重さ。(大渋滞はシンドイ)
ギヤ比ははっきりいって、都心を徘徊するにはだめです。
出足はすぐ吹けるので、セカンド入れてる間に国産ATセダンに置いて行かれます。
やはり中間加速が真骨頂ですな!ワープのように移動しますね。
以前トランスアクスルのALFA ROMEOにMTに乗ってたので、(しかもシンクロがダメダメな奴)
気難しいシフトはむしろ得意になってしまいました。
3200GTのゲトラク6段MTは、出たとき試乗しましたが
凄く渋くて全段入らなかった記憶がありますね。
イマイチの個体だったんでしょうか?
ただ吹け上がりと落ちが凄い!
ポルシェやフェラーリとは全然違うフィーリングで
まるで大ナタを振り下ろすようにビュンと回ります。
あれを操るのは少し練習が要るな〜と当時思いました。
TVRタスカンなんかのフィーリングに近いかなぁ。
投稿: 松戸のS | 2008年9月27日 (土) 18時34分