ガンディーニのクアトロポルテ(その31:エンジンの21話)
いやー、いーかげんに雨は止まんかなあ。カラダがフヤけそうです(笑泣)。
さてさて、ガンディーニのクアトロポルテのエンジン話。きょうはインタークーラーツインターボの続きなんですが・・・。
ちょっとー、皆さん!ウイキペディアで「ツインターボ」って入れて見てみてくださいよー。載ってないんだよ、マセラティビトルボについて、マセラティの「マ」の字もビトルボの「ビ」の字も。
おまけに、グーグルで「世界初のツインターボ」って入れたら、ワタシがこの間書いたブログの中の文言よりも先に、トヨタツインカムエンジンについての記述が出て、それを見たらば、またビックリ!1986年デビューのGX71型(マークⅡ・チェイサー・クレスタの三兄弟)GTツインターボが世界初のツインターボ市販車と、堂々と書いてある・・・。
・・・やっぱり、マセラティって日陰げの身なのね(ヨヨヨ:泣)。
ワタシ、事情通の関係各位にもう一度資料をあたってもらいましたが、やはり、「マセラティが世界初」で間違いないことが判明いたしましたので、改めてご報告申し上げます。「マセラティビトルボこそ、世界初のツインターボ市販車です。間違いありません(笑)」。しかもトヨタは5年もあとです。あしからず。
というわけで、気を取り直して、マセラティのツインターボユニットについてのハナシです。
ターボ本体は昨日のお話のように、日本のIHI製です。コレは、なにやら年代別に仕様違い(タービン形状や冷却方法の違い)があるようなのですが、きちんとした資料に当たったことがありませんので、適当なコトは書きません。非シーケンシャルであることと、ジャーナル(メタル)軸受け(フローティングメタル方式)であることは間違いないと思いますが。
とにかく、ほとんど問題が起きないんで、あんまりハズしたりバラシたりもないんです。タービン軸受けを冷却するための冷却配管からLLCが漏る(金属製配管腐食のため)トラブルが430で一例あったぐらいだよなあ。
但し、キャブ期のビトルボでは、冷却方法の不備、当時高い粘度のオイルがポピュラーで無かったという理由に加え、なぜかメーカーやディーラーの推奨オイル交換時期が「10,000Km毎(左ドア内張りに貼ってあったコーションラベルにもしっかりと書いてある。もちろん日本語取扱説明書にも)」という常軌を逸したモノであったため、「白煙モウモウ」のクルマが続出してたらしいのですが、2.8リッターインジェクションモデル以降のものでは、高性能エンジンオイルの管理をしっかりとやるだけで、まずは、トラブルフリーと云えます。少なくとも、当店では、モチュール300V(高粘度型)を用い、3,000Km〜長くても5,000Kmでのエンジンオイル交換をこの十数年に亘り推奨してきましたが、ビトルボエンジンにおける、ターボの焼損(焼きつき)トラブルは一例もありません。カムタイミングベルトやその関連に起因する、エンジン破損が一例も無いという事実とともに、その専門店ゆえのビトルボマセラティ販売台数(分母)の多さ(実台数300台以上)から見れば、たまには、ダレかにホメて欲しい(笑)と思うもので、密かにマイクロ・デポが「誇り」としているところではあります。
当初、オリジナルのキャブビトルボに装着されていたものは、インタークーラー未装着のターボユニットです。
次にビトルボESが高性能バージョンとして設定された時にインタークーラーが初めて装着され、その時はエンジンの左右バンク上に、地面と水平に「乗っかる」ようなカタチでの搭載方法であり、ボンネットにはインタークーラーに空気を導入するための、いわゆる「NACAダクト(前方がスボまっていて後方が幅広くなった形状:外気を積極的に吸い込む)」が開けられて、より、スポーティーな外観になりました。
しかし、このモデルはそうでなくても整備性の悪いこのマシンを、インタークーラーのゾンザイな搭載方法により、いよいよ「いぢれなく:笑」しちゃったので、さすがにこれ一代でやめました。
2.5リッター時代の最後に、インジェクションを装備、この時インタークーラーの取り付け位置が変更になり、車体最前方のラジエターのさらに前に並列して2基、取り付けられました。この搭載方法は2.8リッターになってからの、228、222、430、スパイダーザガート、カリフ、などデ・トマソ期最後のV6モデル達にそのまま継承されていきました。で、この時期のものが、もっとも「熱的に」エンジンルーム内がシビアな状態になるといった問題を抱えているわけです。このへん、もうちょっと詳しく説明いたしますと、モノコックボディ先端のラジエターコアサポート(ボディの構造部材の一つ)の下には、いちばん室内側から最前方に向かって、順に、
・2基の大きな電動ファン
・ラジエター本体
・エアコンコンデンサ(コレについては、エアコンの説明時に詳解いたします。)
・インタークーラー(並列2基)
という構成になってます・・・って、どうやって冷えるのコレ?って感じ、分かって頂けますでしょうか(笑)。初めて、現在当店がシゴトを依頼している、「この道50年」のラジエター屋の社長に見せた時は、「こりゃー、冷えないよー」と爆笑してましたっけ。現在でこそ、適正な「コア」を選定し、当店のマセラティではなんの問題も無くなっておりますが、こういった部分ひとつをとっても、デ・トマソマセラティを日本で実用に供するには、対策が必要だったんですね(みーんな、アタリマエと思ってるみたいだけど:泣)。ナニシロ、このマシンの電動ファンは外気を社外に直接排出するんでは無くて、エンジンルーム内に吸い込んでいるんです。しかーもー、インタークーラー→エアコンコンデンサ→ラジエターと3段も熱した外気を。で、エンジンルーム内に吸い込んだ熱気は、どこからというコトも無く、なんとなく、熱ーいエキゾーストマニホールドを「撫で」ながら、さらに熱くなりつつ、エンジンルーム床下後方から、やっぱりなんとなく出て行くと、こういうコトになっております。だから、勢い良く電動ファンがブン回ってるビトルボマセラティは真夏など、暑くて近寄りがたいわけです。SE以降の222や、430後期、スパイダーザガート最終、4V、カリフには「放熱ダクト(ビトルボESのとは向きが逆になってる)付きエンジンフード」が装備されておりますが、ハッキリ云ってほとんど実効性はありません。
フィアット期に入る直前、シャマルにおいて、フロントバンパー下部左右のダクトからインタークーラーを冷やす方法論(よってインタークーラーはフロントバンパー後部に搭載)をようやく採用し、上記の問題はほぼ解決をみましたので、ギブリやガンディーニのクアトロポルテにもこの搭載方法を選定しております。
ガンディーニクアトロポルテV6車がビトルボエンジン搭載全車の中で、もっともエンジンルーム内の熱問題に関しては、ラクなのではないかと思います。
インタークーラーは西ドイツ(当時)の「LANGERER&REICH(ホントは「A」の上に点々が付く)社」製、異物を飲み込んだり、ブツけない限り、まーずコワれません。
また、室内にある、「マセラティブーストコントロールユニット(ターボを制御するコンピューターユニット)」は、室内の湿気などによる経年変化で、ほんっとにマレですが、イカれることがあります。でもホントにレア(笑)です。
よって、ガンディーニのクアトロポルテのターボシステムはあんまり「ぶっ壊れない」と思っていいようですよ!これは、力強いこと。
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コメント
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や、やはり。マセラティのターボは丈夫だったのね〜。
むしろ比較的最近のALFA ROMEO GTVターボなんかは
結構、白煙劇を展開しておりましたが…。(羽の軸受け不良多し)
「ちょっと」はいいとこあるじゃん、マセラティ!(笑)
しかし暑い、ビトルボは暑い。そんな仕組みになってたとは…
無理もありませんな。
冬場でもインパネ付近は床暖房気分で、ほんわか暖かい。
いや暑い。
しかし、いざエアコンをオンにすれば、強引にその暑さもろとも
吹き飛ばしてくれます。(今度は寒い)
厳密に言うと寒くなる個体もある。
デポものには、やはり冷却の秘策があったのね。
現にガンディーニクアトロ時期でもオーバーヒート車は
夏場なんか結構あったと聞いてます。(新車でも)
かの有名な「間違いだらけの…」の本にも
「夏は動かないと覚悟すべし」と堂々と書いてありました。
ところで、巨匠は何故かデ・トマソ期及びフィアット期のマセラティは
あまり好まれないようで、北方謙三氏には勧めてるんですが
いいこと言ってるのを聞いたことがありません。
「内装はこれみよがし」とか「クアトロ速いが走りはいまひとつ」など
むしろランチアなんかの方がシックでイタリアらしいと…。
これは結構意外なんですが。(因みにほぼ全ての著書はもってます)
個人的推測だとエンジンフィーリングがいまいち、好きになれないのかもしれませんね。
ロータリーターボもあまり褒めてなかったですから…
ロータリーのターボって巷間言われるほど、電気モーターのようには吹けあがりません。
ローターの慣性質量をなんか感じるんです。立ち上がりはむしろ重い。(特にFD:アンフィニRX-7期)
実際は確かに回りますが。(過去に4台乗りました)
ちょっとその立ち上がりの感じが、ビトルボエンジンと通じます。
ただ最高部類のビトルボエンジンの個体を知らないので、一概には言えません。
話は逸れましたが、世界初のツインターボはマセラティに決まってる!
と昔から常識と思ってました。
が、世間は甘くなかった!と言うか、そんなにマイナーなの?
マセラティビトルボ、車名がツインターボなのに〜(泣)
投稿: 松戸のS | 2008年9月23日 (火) 02時41分
いつもご苦労様です。
だれかたまにほめてほしい?
わたくしなどでよろしければほめさせていただいきます。
300台以上ですか。 やはり凄いですね!!
あの作業工程を300回以上もやっているということですね!!
(車検整備やら修理やらをふくめればもっとですね)
正規ディーラー以外でこの販売実績のお店は無いでしょうね。
しかも300台全て細かいところまで全部頭の中にきっときっと
入っているんでしょうね。
仕事とはいえそこがまた凄い!!
因みに各モデルの生産台数及び輸入台数などもう一度お教え願います。
あらためてもっとびっくりするかも。
投稿: ひこうき班長 | 2008年9月23日 (火) 08時30分
私の222 4Vは、3000回転まではなんかバラバラしてて、止まりそうだなという思いが胸をかすめるのですが、そこからぐっとアクセルを踏み込むと、他では得られないような素敵に爆発する中間加速!この時の滑らかなこと。素晴らしいエンジンだな、となぜなぜしてしまいます。全てのバルヴが揃って激しく静かに動き、不思議とその時の音は聞こえません。空気がスーと流れているような感じです。NAの12気筒や8気筒もいいのですが、ビトルボの6気筒の素晴らしさ!これは乗ってみないとわからないでしょう。
投稿: りゅたろう | 2008年9月25日 (木) 02時22分