あー、せっかくの土曜日ではありましたが、東京の練馬は一日中雨のそぼ降る空模様でした。というわけで、昨日までの「マセラティシャマルねた」は雨天での作業続行が出来ないので一旦休憩といたしまして、並行して行なわれております「マセラティ222SR(朝霞のHさま号)」の内装分解工程を本日は御届けしようと思います。「SRねた」は今までやってなかったと思いますので、コレもシリーズ化決定です(笑)。但し、前にお届けした「マセラティスパイダーザガート篇」や「マセラティ222SE篇」とほとんど変わり映えいたしませんけれど。

他の222シリーズと違いまして、この222SRと222 4vの場合には、フロントバルクヘッド上に設置されたエアロダイナミックスポイラーの取りはずしから始まります。
内装を分解するハナシがどうして外部艤装からはじまるのかという点に付きましては、このブログのヘビー閲覧者の方々でしたら既に御理解頂けているモノと判断し(笑)、その説明を割愛いたします。

左右のワイパーアームを13mmボックスレンチではずしまして、今度はワイパー本体の取り外しです。13mmナットの下から、波板状スプリングワッシャーが出てくれば正解ですが、多くの場合ワッシャーが割れていたり欠損していたりします。そういった場合は組み立て時にワッシャーの調達が必要です。続いて、駆動軸の上に被さる樹脂製防水カバーをコワさぬようにはずします。
22mmのナットが出てまいりますが、周囲のボディ部分との間に「真芯」が出ていない場合には、ボックスソケットが入りにくい(というか、まったく入らない場合もある)です。その場合は後述するワイパーユニットフレームの取付ネジを先に解放するとよいでしょう。ココ、しれっと書いてますけど、シロウトさんがいじる場合には、コレだけで「もう心折れちゃう」部分なんですよ。

深型22mmソケットレンチで緩めていきます。この時フロントウインドーやボディ塗装部分にキズを付けぬ様に周到に作業します。
プロでもゾンザイな業者さんですと、この周囲をキズだらけにしている場合は非常に多いです。この一段ナットが沈んでいる造作は222SRや222 4v、レーシング等デ・トマソ2ドア系ビトルボの他にシャマル、ギブリ、最終型スパイダーザガート、最終型430にも該当いたします。要はスポイラーとこの造作はセットというわけです。

エアコンの内部フラップを空圧で駆動しておりますが、そのためのバキュームサージタンクがコレ。二本の配管を「プシュッ」と引き抜き、あとはプラスドライバーでタッピングビスを取れば簡単にはずれます。
ビスやワッシャーとともに、タンク基部の下に敷いてあるゴムパッキンも必ず拾っておいてください。コレ無くすと室内に水が浸み出てまいりますゆえ。再組み付け時に無くされてる個体もまた時々あります。

外気導入口を覆うカバーもサージタンク同様に取りはずします。この下にもゴムパッキンがありますのでお忘れなく。
続いては、ブロアーレジスターとワイパーユニットフレームの共締めによる取り付け部分を解放します。13mmソケットを用います。下からC型に切れ目の入ったスプリングワッシャーと通常の平ワッシャーが出てくれば正解です。

ワイパーフレームのもう片方の取付部位。上記同様に取り外します。
ああ、云い忘れてましたが、ワイパーモーターに繋がるカプラーは先に抜いておくと良いでしょう。
ここまできますと、ワイパーユニットはハズれ掛かります。一旦バルクヘッドに飛び出ている軸部を下方に押し下げ、軸周囲に付いている樹脂ブッシュを左右ともに摘まみあげておきます。この後、ユニット本体を取りだすのですが・・・ちえの輪のように取りだしますゆえ、作業者兼撮影者のワタシにはその工程をお見せすることが出来ません。

ワイパーユニットがはずれますと、ようやくバルクヘッド内の「ダッシュボード取り付けナット」に工具を入れやすくなります。デ・トマソ期モデルの場合は四か所で締結してあります。ギブリも同様。ガンディーニルックのクアトロポルテ各モデルや、マセラティ228では、このあたりの手順がちょっと違います。10mmのナイロンロックナットをソケットにエクステンションバーを付けたレンチで緩めていきますが・・・相手のボルト、どーしてこう長いんだろうな(この不必要に思える長さは、搭載時には逆に有難いのですけれど)。

といったところで、今度はいよいよ室内側を分解してまいりましょう。
ダッシュボード右側下面のグローブボックスをまずははずします。
助手席シートも一旦降ろします。6角レンチで4本のレール固定キャップボルトを緩めていきます。この222SRでは、ハマりませんでしたが、過去に水が浸入しているような個体では、ここが錆ついてまったく動かない場合や、すでにボディ側に溶接されているナットがはずれてしまい、いくらクルクルと回しても取れなくなっちゃってる場合もあります。その状態からの突破方法は御自分で考えてください(結局最後には正攻法しかありませんが:笑)。

ダッシュボード裏の右側には、エアコン制御の一部を司るリレーが2基ありますが、そのうちのどちらかひとつを引き抜くとリレーソケットの取付タッピングビスが頭を出します。
この部分はメーカー製造時に現物合わせでビスの下孔を穿孔しているらしく、それぞれのクルマによって取付位置や取り付け向きに違いがありますので、これといった正解はありません。手造り車らしさを満喫出来るヒト時です(笑)。

続いて助手席側のシートベルトキャッチをはずします。
ボルト頭部の保護カバーをはずし、17mmソケットとエクステンションバーを組み合わせて緩めていきます。長大なボルトには複数の「スリーブ(円筒形の鉄物)」が被さって出てまいりますので、カーペットのうしろに落とさぬ様に注意が必要です。続いて灰皿ユニットを「パカちょ」とはずします。「パカちょ」と簡単にはハズれない場合も良くあります。その場合は先天的・後天的原因を探求しながら作業をすすめます。灰皿ユニット自体が「パカパカする」のを嫌って、灰皿ユニット直下に位置するリア送風口へのエア導入ダクトに直接タッピングビスで打ちつけてあったりするのも多いです。その場合は先にセンターコンソール右側カーペットをはずしてからの作業になりますね。接着剤でくっ付いている場合には、もう処置なしですね(ソレでもワタシたちはなんとかしますけれど:笑泣)。

はい、前回スパイダーザガートの巻でも詳しく御説明したセンターコンソールボックスの取りはずしです。ところが、この222SRではあっけなく素手で簡単に取れました。もちろん肘掛け(フタ)なんかハズしたり分解したりいたしません。
斯くの如くに色々個体差があるのがビトルボマセラティならではの深遠な世界(いやいや、ソコが浅いのか?:笑)なのです。400台近くを徹底的にバラさないと見えてこないコトがあります(それでも、いまだに時々ハマります:笑泣)。

センターコンソールボックスをはずすと、コンソール本体の後部取り付けネジの頭が見えます。柄の長いプラスドライバーを用いて二本ともにはずします。
オートマセレクターの樹脂ベースカバーは左右から指で挟みながら上方に引っ張り上げるだけでいとも簡単にハズれるのがデフォルトですが、後天的に接着されているモノも多いので注意が必要です。ここは緊急時に何かと瞬間的ににハズしたくなるところですので、ガッチリと接着するのはお奨め出来ません。
灰皿ユニットの跡地(笑)にあいた穴から前方の辺の裏側に指先を突っ込みますと鉄の爪を触ることが出来ます。それを前方に押し込みつつ引き上げますとご覧の様にセンターコンソール下部パネルを分離するコトが出来ます。但し分離時にはゆっくりと丁寧に。革と革とが湿気などで張り付いている場合も多いです。キズやハガれが発生しないように慎重に作業いたします。

続いてはパワーシートスイッチを浮かせてはずします。
ワタシはこの時知ったかぶりをせずに、今でも必ずスイッチとカプラーにマーキングを施します。
あまりにも作業工程が多く、また時間も長期に跨るので、記憶に頼るのは危険だと考えているからです。コレを作業中に行なうのは面倒臭いモノですが、こういったことを怠る作業者は必ずゆくゆくは大きな失敗をするものです。特にイタ車においては、ね。

センターコンソールの中心部で威厳ある風格を放つ「パーキングブレーキウッドノブ」。コレはたった一本の小さな小さな「いもネジ」で固定されています。
細い細い6角レンチで、少しずつ手繰る様に緩めていきます。真夏の夕暮れ時などに行なうこの作業は相当しんどいです。もう、ぜんぜん目が見えん(笑泣)。

パーキングブレーキレバーを覆い隠す革製のカバリングは先ほどのセンターコンソール同様に前後4本の鉄の爪で本体に引っかけるようにして留めてあります。
この分解作業は手先を怪我いたしますので、細心の注意が必要です。また、例によって、ツメの引っかけ方や形状は個体ごとにまちまちなので、あっけなく取れる場合とこの工程だけで30分を費やす場合とがあります。

さあ、ダッシュボード本体に戻って右側の固定ボルトをはずしましょう。13mmのメガネレンチ(出来ればラチェット機構付)を工具に選びます。
写真に見える白い板が積層したモノは、ダッシュボード端部(この場合は右側)の高さをなんとなくキメるための樹脂スペーサーで、ここでは6枚を費やしているのがわかります。
だいぶん助手席側が爽やかになってまいりました。ようやく半分は越えたかな。

ついでに右側ドア周りのウェザーストリップを一旦はずし、その中に貼られている、ダッシュボード端部の皮革ベロを剥がしておきます。
昨日までのシャマル分解工程解説で、ワタシが指摘していた組み損ない部分の正解がこの写真の状態です。ボディ側に両面テープでしっかりと貼り付けた上に、ウェザーストリップをきっちりとはめこんでいくのが正しい在り方です。

センターコンソール右側のカーペットを除去いたします。まずはグロメットなどで留っている前半のピースをはずし、続いて写真のタッピングビスをとります。
この222SRでは、カーペットのベースにある樹脂部材がいまだシッカリとしておりましたが、後述するように、ここが既に破壊している場合もあります。







助手席側と運転席側のシートベルト始点、運転席側のシートベルトキャッチをそれぞれはずします。いずれも樹脂カバーをとり、17mmソケットとエクステンションバーを用いての作業です。 ここでも、各ボルトに被さったスリーブがバラバラにならないようにテープを仮に巻いておくなどの処置を施しておくのが良いでしょう。
ちなみにリアシートのシートベルトも含めて、この時期のマセラティ用「TRWサベルト製シートベルト」はすべて17mmボルトを使っています。
ついでに云えば、内装の分解組み立てには、7・8・10・13・17mmのボックスソケットレンチとエクステンションバー、メガネレンチ(ラチェット付でオフセット可動式であれば云うコト無し)、柄が数種類の長さの各種プラスドライバー、精密プラスドライバー、6角レンチ各番手、グロメットはずし工具、樹脂ベラ、各種先曲がり千枚通しセット、木槌、ウォーターポンププライヤー、ニッパー、ラジオペンチ、ビニールテープ、黒色ガムテープ等々が最低限必要です。
また、シリコンオフ、接点復活剤(ドライタイプ・ウェットタイプ)などのケミカルもキチンと組み込むには必ず手元に置いておきたいものです。マイクロファイバークロスも有ると何かにつけて便利ですよ。

今度はダッシュボード左側の締結を解きます。13mmのメガネレンチを使用します。左側からは5枚の樹脂スペーサーが出てまいりました。テーピングとマーキングで、ボルト・ワッシャー・スペーサーを一纏めにして保管します。
右側後半部のカーペット部材を留めている、シートレールベース上のグロメットをはずします。コレでこのカーペット部材がそっくりはずれます。カーペットを貼り付けてあるベースの樹脂部材は経年で「モロモロ」に風化している場合もありますので、ちからワザは出来るだけ避けるように作業いたします。

1DIN規格のオーディオ本体を取りはずし(オーディオの取りはずし方法については、メーカーによってそれぞれ異なりますのでここでは割愛させて頂きました)ておき、ウッドパネルを留めている二本のタッピングビスを先の細い精密プラスドライバーではずします。取り付けネジをうまく隠したものですよね。オーディオ本体を取りつけるための「段加工」が素敵なウッドパネルです。

前後いたしますが、オーディオを取りはずした直後の状態が左の写真です。先のビスを取りはずすコトにより、いとも簡単にウッドパネルははずれてまいります。
ウッドパネルの上辺は、その上に位置するスイッチ群の樹脂枠下部に引っかけているだけです。よって、上の樹脂枠はかなりしっかりとダッシュボードにくっ付いていなければなりませんが、樹脂熔着で留められたソレは非常に脆弱で、ちょっと触るとかんたんにダッシュボードと分離してしまいますのでいつもマイります(今回も既にトレてます:泣)。

続いては、エアコンコントロールユニットをはずします。先の細いプラスドライバーで4か所のタッピング皿ビスを抜いていきます。ビスは非常に小さいので、落とさない様に細心の注意をして臨みます。
周囲に気を配りつつ、ユニットをゆっくりと、写真の様に右側から抜き出します。

そうしますと、裏側のカプラーが見えてまいりますので、写真の様に左側を支点として奥に引っ張り抜きます(ここには特にロック機構はありません)。
このカプラー、はずす時はいいのですが、再度装着し直す時には接触不良防止のために「ある策」を弄する必要が出てまいります(実際にソレでエアコンが原因不明の不調を現じている場合が多くあります)。とにかく「地道に」がキーワードなんですけれどね(笑)。

ダッシュボードとセンターコンソールの締結は、通常ウッドパネルの裏に隠されたたった一本のタッピングビスによりますが、それをはずしておきます。
ダッシュボード中央部左右には、ボディと締結するためのステーがあります。まずは、後部送風口への左右ダクトを引っこ抜きますとこの右側写真の状態になります。超長ーい柄のプラスドライバーを用いて、ここのタッピングビスとスペーサー替わりのナットもはずしましょう。

ここで、必ず「輪止め」を前輪タイヤに履かせます。パーキングブレーキレバーを一旦はずすからです。
二本のキャップボルトを6角レンチではずします。
オートマセレクターレバーを一番手前(Lの位置)に引き寄せ、パーキングレバーを上方に高々と引き上げつつ、センターコンソール本体をダッシュボードから分離いたします。

で、センターコンソールがはずれました。例によって「伝統芸能」の黒ガムテープがそこかしこに散見されます(笑)。
オートマセレクターを必ず「Pレンジ」に戻し、パーキングブレーキレバーも一旦再締結しておきます。
メータークラスターもはずしましょう。222系の場合、左右二本のタッピングビスが丸だしになっておりますので、作業は簡単です。後部の複合カプラーを5個、2Pカプラーを1個、1Pカプラーを1個、バキュームホースを1個、エキテンアンプの丸ギボシを二組、それぞれはずせば、ダッシュボードと分離が出来ます。

ダッシュボードの一部は、ボディ側の構造物にステアリングコラムポストと一緒に共締めされています。
17mmのソケットにエクステンションバーを付け左右のボルトを取り外していきます。
一気にはずすとステアリングがゴボッといきなりおっこちてまいりますので、ビックリいたしますよ。また、この作業により、大概劣化したステアリングコラムサポートブッシュが逝きますので、コレは全体的に内装の再組み立てを完了したあとに新品交換します。

ここまで来ますと、あとはダッシュボード本体をゆすりつつ引っ張り出すのみ。
ここでも個体差があり、過去にフロントウインドーの交換歴があったりすると、はみ出たウインドーシーラーがダッシュボードにガッチリとくっ付いてしまっている場合があるので、まあ大変なコトになります。この222SRは当店出身の「イイ子ちゃん」ですから、とても気持よく降りてくれました。
これで、ダッシュボード降ろし一式がとりあえず完了いたしました。あー、写真撮りながら、文章考えながらの「自作自演作業」はホントにたいへん(笑)。本日はオーナーの「Hさま」が直々の御来店で現在エンジン整備中の現車と御対面されました(今日も楽しいおハナシを有難うございました:喜)。・・・あー、ちなみに明日は日曜だけど、午前中は臨時出勤します。今日はもう早く帰って寝よ(笑)。
それでは、また来週!