ドアの中はラビリンス(マセラティシャマルの場合)
はいはい、お待たせいたしました!昨日は久しぶりの「図解付本ネタ」であったせいか、アツいコメントをたくさん頂戴している様で、感謝に堪えません。ハッキリ云って今日はもう「結構キテます」よ、ワタシの足腰&二本のカイナ(笑)。全体的にシビれてくるとこれはもう快感なのかも知れないと思う(しかない)今日この頃ではありますよ。
今日の午後には、御近所に住むという二十歳のお客さんが、「見学していいですか?」とお尋ねになるので、黙ってこのような一連の光景を見ていって頂きましたが・・・どう思われただろう(やっぱアホ?:笑)?
ところで、当ブログのプラットフォームである「ココログ」自体が、本日の朝からダウンしている様子で、一応コレをアップしてみましたが、自分も見るコトが出来なくなっております(大泣@現在21:10)。午前0時までに果して大丈夫になるのか(笑)?連続更新記録の運命や如何に。
はい、今朝は左ドア内部の清掃作業から始めます。写真をご覧になりますと、コレは「結構きてーる」な汚れ具合に見えましょうが、コレでもストック状態ではマシな部類です。だいいち、昨日の右ドアの経過を思えば、インシュレーターがあるべき位置に正しく貼られているだけでも、もはや僥倖と云わねばなりませんね(笑)。早速、洗剤と水流でまずは泥汚れ系を流していきます。ホラ、きれいに水も抜けている。こうでなくてはイケません。ああ、こんなにも「あたりまえのコト」に日々感動出来るシアワセを噛みしめながら・・・。
今度は、エアツールで隅々の水分を吹き飛ばし、ありとあらゆる「色んな種類のヤバイ汁(笑)」を駆使して、ありとあらゆる「色んな種類のこびりつき汚れ」を除去してまいります。
ボディ下部はよーく脱脂した後、錆転換剤を念のために流し込んでおきました。今日は天気に恵まれたので、こういった乾かし系仕事には絶好です。
続いてドア内部に存在するハーネス類の清掃と各部のチェックを進めます。
右の写真は左ドアに位置する「パワーミラースイッチ」の繋がるカプラーです。
あー、皮膜が数か所ツブれているようですね。昨日ドアの内張りを外す時に、間違ったハーネスの取り回しをしているなと思っておりましたが、やはり、ムリヤリ押しこんでスイッチを内張り部材に埋め込んでいたのが、こういった見えないところに「災厄の元(笑)」をもたらしてしまっています。
まあ、サイワイなコトに完全に剥けてしまったり、ギボシからコードが抜けてしまったりはしていないようです。
ちなみに、このカプラーとスイッチ本体は「フォードプローブ」のもので、ムカシのランドローバーディスカバリーにも同じヤツが使われておりました。ハッキリ云って品質は良くないです。ギボシとコードのカシメ具合が、もう最低。アメリカ人もやっぱりしょうがない(笑)。
ご覧の様に、内部のハーネスはすべて一旦おもてに抜き出して作業をいたします。途中に色々なカプラーが枝葉の様にくっ付いていますので、ウインドーレギュレーターを取り外しているこのチャンスでないと、非常にヤッカイなコトになります。
各コードを束ねるテーピング素材が、この時期のビトルボモデルあたりから一旦「布製」になるのですが、このテープは、経年すると最低最悪の素材です。このシャマルの場合は、いまだギリギリセーフといった感じだったので、こういったところで、保管状態や、普段の走行・保管状況(雨天で乗ってるかどうか、車庫付ガレージ収納か否か等々)を推し量っている側面もあるんです。
ああ、どうマズくなるのかと云うと、ある一定ラインを超えると一気に粘着力を失い、バラけてしまうというのが一つ(ギブリやクアトロポルテで床下などにポロポロおっこちてきたのを見たコトはありませんか?オーナー諸氏)。その一方で、バラけているのに、「ネバネバ感」が表面にまで浸み出してくるのが二つ目。とどめに、染色もネバネバに混じってトロけ出てくるので、ちょっと触ると手が真っ黒になる。特にドア内部などで、長らく水に浸かっていたようなものは、腐って風化してしまい、これが最終段階。ギブリやガンディーニクアトロポルテの内装に使われているのがすべてこの黒い布製テーピング素材で、真夏のダッシュボード降ろし作業などは汗と埃臭さとネバネバ真っ黒の三重苦でホントに最低です。というわけで、事態が悪化するまえに、ビニールテープで覆っているというわけです。
さあ、こちらはキレイに掃除の終わった左ドアの内部です。本日の最初の写真とお比べください。別物に生まれ変わっているのが御理解頂けると思います。
あー、やっと風呂上がりのさっぱり感が出てまいりました。
例によって、まったく見えなくなってしまう裏の裏まで造り込んでしまいました。「笑わば笑え(自分も自嘲笑)」。
先ほどのテーピング作業を終えたハーネスをドアの内部に戻してまいります。
いまだ、このあたりは未清掃ゾーンですから、油とホコリで汚れていますね。
この部分は大ラスでの仕上げになりますので、御心配無く。とにかく今日は、ドアを閉められるところまではイカないとなりませんが、作業は匍匐の歩みです。朝からほとんど休まずに座りっぱなしなんですけどね。
ドアラッチの機構部分です。左は洗浄前、右が洗浄後。「ありとあらゆる(以下省略:笑)」・・・でキレイにしたあとで、全体的にグリスを注入するように入れ直し、表面にもウッスラと塗り伸ばしておきます。
ワタシは高粘度グリス(ワコービスタックなどの茶色い糸を引く系)を原則的にキラっています。各部のフリクションが多いくせに、リターンスプリングの引っ張り力が弱い傾向にあるイタリア車の機構部材にあれを使うと大概碌なコトにならない(満足に動作しなくなる)からです。というわけで白色系のウレアグリスと各種シリコングリスを適材適所に使い分けています。・・・あー。モリブデン系(真っ黒なヤツ)は一度使ったらもうおしまいです(とにかく手が汚れるのがイヤ→アルカンタラなどの内装布材を汚すと絶対取れないし)。
夕方になって、今朝オーダーしておいた、インシュレーター材が届きました。早速採寸して、昨日の右ドア内に接着。
まあ、ホントはあっても無くてもあんまり変らない様な気もするモノなんですが、そこはやはり「気分の問題」というコトもありますので。もう、はじめからこんなのちゃんと貼って来いよな、イタリア人よー(笑)。
ドアラッチのガーニッシュはステンレス製。実はワタシがビトルボ系統のマセラティにヒカれたのって、こういった「小ワザ的演出」のカッチョ良さにあったんだよなー。
とにかく、クラシカルなムード漂う演出ですね。でもこういったいっけん無駄な演出は真っ先にコストダウンの対象にされてしまいました。・・・ささ、磨こう磨こう、もう日が暮れる。
思えば、そもそも、凹みをあちこち取るために、ここまでバラバラにしたんだったよな(すでに遠い目をしている:笑)。先天的、後天的な凹みや歪みを残さずキレイに取ることが出来ました。
ついでに内側の写真もどうぞ。ドアのラッチ金具(機構内部も)が美しくなったので、見栄えが良いですね。あー、だけどドアが完成するのにあと何工程あるんだろうと長嘆息ではありますが。
ここにも忘れぬようにグリスをたっぷりと給油します。やはりウインドーレギュレーターを入れる前に行わないと肝心の部分への正確な給油が難しくなる「ドアストッパー」機構部分です。
ギブリまでのビトルボマセラティでは、ここが固まってドア開閉時に「きーかー、きーかー」と音が出ているモノが非常に多いです。そういった個体は大概外側からグリスをドロドロと塗ったくられているものですが、コアに届いていないので、一向に治りません。ちなみにドア開閉時に「げこげこ」と云うのは、このストッパー取り付けネジが緩んでいるか、鈑金屋のチョンボでスプリングワッシャーを入れ損なっているか、ボディ側基部のスプリングスリーブが真っ二つに折れているかのどれかです。このハナシはまた別の機会に。
日が暮れてまいりました。左右のドアアウターノブは一旦キーシリンダーを分解清掃の上、たっぷりと給油。この部分も、キー穴からなんとか給油しようと試みることが多いと思いますが、ほとんど肝心のところには入っていきません。このハナシは・・・前にやったよな、確か(もはや自分でも、どこまで重複しているか憶えてないのです:笑)。あー、あとねー、スプリングワッシャー(入ってなかった)はちゃんと入れて固定しろよな、鈑金屋。止まらないからムリヤリ締め上げて、アウターノブの周囲が全体的に歪んじゃってたんで、デント屋さんにここまで手間掛けさせちゃったんだから。
とはいえ、このアウターノブをボディの正しい位置に装着するのは、周囲にキズも付けられないし、かなり難度の高い仕事ではあります。ウインドーレギュレーターその他の臓物が入っちゃってる状態では、リンク繋ぎも恐ろしく難しいです。こねくり回しているうちに、ボディが歪んでいってしまうという事情の方は、ワタシ拝察いたしますよ(だから、モチはモチ屋で:笑)。
というわけで、今日もまだシャマルにドアウインドーが入りませんでした!昨日分解までいった「222SRのヒーターケース」ネタもおあずけであります。ごめんなさい。
・・・寝ましょう、やっぱり(笑)。それじゃ、また明日!
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まったく関係ありませんが、森ビルでやっている「ワンピース展」、チケットが完売続出なんですね。子供にせがまれましたがムリの様子
で、これほどの手間を掛けたビトルボを、展示するイベントとかないかしら?、ブログを拝見すると、ここに集う方々は日本有数の数奇者、数は少なく、軽視され易くとも、そんな人々の眼を奪うクルマって無くないですか?。
投稿: 一松 | 2012年6月 7日 (木) 22時03分
最低な部分を最高にしてしまう職人技。
きっと、二十歳のお客さんは根性を汲み取ったことと思います。
一松さんのおっしゃるとおり、展示するイベントがあればいいナァ。
投稿: Wさま | 2012年6月 7日 (木) 23時02分
ああクルマに乗りたくなってきました。
投稿: おぐ | 2012年6月 7日 (木) 23時35分
なるほど、モチはモチ屋、ですか。でもこれほど徹底的に仕上げるモチ屋は、滅多にお目にかかれるものではないでしょうね。イタリア人を嗤い、アメリカ人を嗤い、いい加減な仕事で済ませる日本の整備工をも嗤い…ふと、青天歴14年のわがアレーゼ製スパイダーのドア内部を想像して、笑いが凍りつきました。
投稿: 上京FMt | 2012年6月 7日 (木) 23時53分
ぎゃぁぁぁぁ、ちょっと目を離していたスキに、
222SRが分解されてる!!!
行きます行きます。
今度の土曜日伺います!
で、これからちゃんと毎日ブログ見ます(笑)
しかしSRも、このシャマルのドアみたいになっちゃうんだと思うと、
なんだか感慨ひとしおであります。
くれぐれも無理なさらない範囲でガンバッて下さいね。
取りあえず、明日お電話差し上げます(笑)
投稿: Hでございます | 2012年6月 8日 (金) 00時07分
昨晩はブログを見られずで、今朝見ました。読み応えが半端なくなっています。その20歳のお客さんはいつまで見学していたのでしょうか。きっと妖しい車たちが出入りしているのをみていたのでしょうか?ドアラッチのガーニッシュは、私も刺さりました、なんともいいですよね。今度伺うときは、タイガーバームか、湿布持参にします。
投稿: 練馬のH | 2012年6月 8日 (金) 08時48分
ドアの中はラビリンス、ってあんた、いい加減にしなさいよ。
おれのかと思ってぞっとしちゃったけど、こんなことやってたの??!!
感謝というより唖然。
こうまでしなきゃいけんのか!!
また、デポはこうまでするか!!
馬鹿なのか、アホなのか、こんな車に惚れてしまったあんたも私も業が深いに違いない。
でも、ちょっとずるいぞ、デポ。
値引き交渉が出来んじゃないか!!
投稿: りゅたろう | 2012年6月11日 (月) 19時46分