マセラティ222SRの内装全分解工程(その4)
6月に入って、ここのところ結構肌寒い日々が続いております。御風邪を召してらっしゃる方も多いと思いますが、皆さんもご自愛くださいね。一方、こちらのブログなんですが、ここのところ結構「濃厚な」本ネタが続いておりますので、いい加減皆さんも飽きてきてるのではないかとちょっと心配ではあります(しかも昨日のコメント欄を拝見いたしますと”あまりのグロさ”に皆さん些かならず「ヒイ」ているのでは無かろうかと若干の懸念もあったりして)。
・・・が、今日もしつこく、ソレ(笑)。
でも、御心配には及びません。昨日までの「ウゲウゲ状態(笑)」から一転、本日はヒーターケース関連のそれぞれの部材がスッカリ美しくキレイに生まれ変わった姿をご覧に入れたいと思っております。
はじめに云っておきますが、本日写真に写っている品々は、すべて昨日まで御紹介した現品の作業後の状態をそのまま撮影した画像です。新品を撮影した「まがいもの」ではありませんからね、あしからず(ココまでに出来るワケ無いヨーという”心なきツッコミ”をあらかじめ防御:笑)。
まずは、エバポレーターの頭部と、ブロアースリットファンを覆うメインケースのふた部分です。仕上げにはシリコンオフを使用しており、この段階ではすべての部材にツヤ出し剤は一切使用しておりません(まだ、このあとにウレタンフォームの接着工程が控えているため)。
昨日のコメント欄「おぐ」さんからの御指摘(ご質問?)にお答えいたしますと、「ネチョドロ画像」の撮影は、ホントに困難をキワめてのものでした。
あまりにも「グロ過ぎる画像」を載せるのもどうかといったワタシの中の逡巡と、作業中のデジカメ撮影が困難であるとの理由で、従来のこのシリーズでは、「ネチャドロ搔き落としシーン」を自粛(笑)しておりましたが、この際「マイクロ・デポが徹底的にやる納車整備作業」というのがどういったモノであるのかを御理解(どちらかと云えば、これからマセラティ中古車を買おうと思っている方々に)頂くべく、あえて載せさせて頂きました。
服地の裏地に凝る様に、ホントに本物の「粋」というのは見えないところを如何に「シレっと」造り込んであるかに掛かっているとワタシは考えます。「最高級機械式腕時計」なんてのも、そういった世界の産物ですよね。徹底的に造り込まれ且つソレが正確に作動しなければ、時計に4千万円もハラえませんって。クルマも同じです。当店では金時計まで付いた(ソレでいて、きちんとエアコンまで効いて走りもする)ビトルボマセラティ(笑)を総額170万円程度のモノからご用意しております。ワタシはどのように考えても「お得」であると思います。
ちなみに今回の撮影の仕方。デジカメは作業中にビニール手袋をしたままの左手で保持し、親指をカメラ上部のシャッターに、残りの人差し指を除く3本の指をカメラ底面に添えるようにしつつ一瞬にしてワンカット2~3枚ずつ撮影しています。当然カメラは「ものすごい状態」にはなりましたが、作業完了後に丁寧に汚れを拭き取り、労ってやりましたよ。
ヒーターケースの組み立てが済んだら、ここにはウレタンフォームが貼られます。ヒーターケースAssyの頂上に来る部材です。いつも洗浄清掃する時に、その入り組んだ形状には手を焼きます。
はい、こちらは御馴染「ドクちゃん」の胴体部分です。ダッシュボード中央部の二個の吹き出し口に接する部分です。
「ちょこんと投げだした足」に見える部分は、センターコンソールに仕込まれたリア送風口への導風ダクトに繋がってまいります。意外と真面目に「クライメートコントロール」化しようとしてるんですよ(笑)。
裏側の拡大写真を載せておきましょう。精密マイナスドライバーとシリコンオフを浸したマイクロファイバークロスにより隅々まで「仕上げ拭き」を施してあります。
組み立て直前に、フラップ鉄板へのウレタンフォーム再接着と、可動部への給油を行ないます。「ドクちゃん」頭部にも厚手のウレタンフォームを貼っていきます。
「ドクちゃん」腕部にあたる足元向け送風口は、分解された状態ではこのように小判型の穴になっています。
丸い筒状部分には樹脂の細いジャバラダクトが取りつき、それぞれがダッシュボード左右の一番端にある、左右ドアデフロスターへの送風口(ドアを開けた時、ダッシュボードの脇にゴムのジャバラがついた穴が見えるでしょ、まさにソコです)にエアを送ります。
このダクトの取り付けはダッシュボード搭載組み立て工程の最後の方で行なわれます。
一番大きなメインケースも水洗いの後、一旦乾燥させて、中も表もシリコンオフで仕上げ拭きいたしました。
とりあえず、ここまでヤレばようやく、エアコンONでの「車内飲食(笑)」も出来ようかというものです。コレで皆さんも安心でしょ。
外気導入・内気循環切り替えフラップに貼られるビニール製表面皮膜部材です。
前にもおハナシいたしましたが、デ・トマソ期までのものでは、このように厚手の素材が選ばれておりますので、キレイにして再使用出来ます。フィアット期のギブリやガンディーニクアトロポルテでは、ここにかなり薄い素材が使われているため、再使用は不可能。よって、当店ではこの部分も新しく切り出したものを造って装着しています。
左側の写真は左右の足元送風口フラップとソレを駆動するダイアフラム。写真中央のちょっと大きなものは内部フラップ駆動用のモノです。
右側の写真は「ドクちゃん」の腕にあたる、左右足元への送風口です。上部の円筒形部分には樹脂製の太いジャバラが取り付けられ、ダッシュボード両端左右の顔面送風口へとエアを導きます。
この小さなケースが変形したり、取り付け不良であったりいたしますと、その内部を摺動する小判型フラップの動きに「引っかかり」が発生いたします。
というわけで、前述いたしましたように、小判型のフラップは折れているコトが多いというわけです。樹脂の「イキ」が良い時だけちゃんと動けばいいのだという「マズい設計思想」が見てとれます。コストダウンはロクなことがありません。
昨日の最後に御紹介した、ケース最下部に位置する「導水板」です。発生していた赤サビが転換剤の作用で化学反応し黒く変色しています。
ここはあえてこれ以上の塗装を加えずにそのまま組み立てるコトにいたします。塗料の揮発臭を避けるためです。錆転換剤には乾くまでに独特の臭気が若干ありますが、完全乾燥すると、ほとんど無臭化いたしますので大丈夫です。
昨日「ネチョネチョ」まみれであったフラップもご覧の様にすっかりキレイになりました。
樹脂フラップの軸部分をこれから直していかねばなりませんね。また、皮膜部分のウレタンフォームもそれぞれに貼り直さねばなりません。
すべてのバキュームホースとワイヤリングハーネスAssyの各部に附着した「ネチョネチョ」類やホコリ汚れもすっかり除去いたしました。
ホースそれ自体には弾力性も柔軟性もまだまだ充分にありますから、このままでしばらくは大丈夫です。ハーネスの各部皮膜も健康。こういったゴムホース類やビニール皮膜コードの品質は、欧州車においては、この時代までのクルマが最高に良かったモノであったと云えます。90年代中盤からドイツ車を先頭に使われ始めたリサイクルペレットを混ぜた樹脂成型品や弾性材については、ワタシたち、当初からかなりの懸念を抱いておりましたが、10年程度経過すると、「やはりダメか」と云わざるを得ません。もっとも、「6年でクルマを捨ててね」という、メーカー主導の「エコ思想」にはキッチリと合致した品質ではありますが。
ケースの組み立てに使用するタッピングビスも、あらかじめ溶剤に付けておき、頭部の「ネチョネチョ」を溶かし落とします。
右の写真は左からサーミスタとブロアーレジスターです。
サーミスタから「クルクルと」伸びている針金状の部分は「キャピラリー管」と呼ばれる部分です。ヒーターケースをすべて組み立て終わった後に、ケースに開いた小さな孔からこのキャピラリー管をさしいれて、先端部分をエバポレーターのコア内まで送り込みます。エアコンの物理反応が進み過ぎて、内部を凍結させないための「冷えすぎ防止装置」とでも云うべきものです。89年あたり以前のビトルボ系マセラティにはコレが付いていなかったので、真夏にはホントに凍ってました。凍るとエアコンは機能を失いますので、当然の如くに車内の人間の方は暑い(笑)です。ここ10年の当店出荷車は未装備車にこのサーミスタを追加する工作を(頼まれもしないのに:笑)施しておりますので、御心配は要りません。
ご覧の様に、ちょっと突くと耳あかのようにポロポロととれてしまいました。ここは、ヒーターケース搭載後に、ブロアーレジスターの直付け配線ともどもに処置してまいります。
こうして、ケースの各部材は悉く生まれ変わったワケですが、内部のエバポレーター&ヒーターコアはいまだ未完成です。まずは、散見される錆に転換剤を塗布して行きわたらせます。
実際に、この部分はエアコンを使用している時には常時水分でビショビショになっているところです。乾く間も無く毎日使用しているクルマの方がカビもサビも出にくくて、コンディションを保ちやすいというのには、こういったコトもあるのですね。
それでは、また明日!
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『とりあえず、ここまでヤレばようやく、エアコンONでの「車内飲食(笑)」も出来ようかというものです。』の所で、『うどんの自販機』を思い出しました。(笑)
投稿: nearco | 2012年6月13日 (水) 23時56分
きれいすぎる…。思わず昨日の写真と見比べてしまいました。
あれをこんなにきれいにしてしまうとは…、人間業とは思えません。
投稿: おぐ | 2012年6月14日 (木) 00時33分
”あまりのグロさ”←全然ヒイてないですよ。
むしろバンバンやって欲しい(マゾ?:笑)。
「本物の「粋」というのは見えないところを如何に「シレっと」造り込んであるか」
は、まさにその通りだと思います。
筋が通って潔いです。
こういう絶え間ない努力が、顧客と長いつきあいに結びつくものだと思います。
投稿: Wさま | 2012年6月14日 (木) 00時39分
・・・感激しております。
本日の一連の写真ときましたら、商品カタログのブツ撮りの
様ですらありますね。
まぁ、よくもここまでピカピカに仕上げてしまったものだなぁと、
昨日の写真と比べて見るにつけ、驚くやら呆れるやらで・・・(笑)
左甚五郎も真っ青な手間仕事であります。
これは是非、現物を見てみたいものです。
もう、頬ずりしちゃうかもしれません(笑)
あ、ダメだ・・・。
やっぱり今日、お邪魔しちゃおうかな。
近いって素晴らしい(笑)
投稿: Hでございます | 2012年6月14日 (木) 02時58分
そうなんです。専門店のこだわりで頼んでなくともいろんな整備をやってくれるんです。明細書に整備内容がびっしり記載されております。
投稿: Ryo | 2012年6月14日 (木) 07時30分
見事に綺麗になっていきますね。梅雨のこの時期は、ムシムシしてこのような作業も辛いですね。でもまだ真夏や、真冬よりいいのかもしれません。カップの方は、里帰りして何事もなかったように一発始動だそうで。。。
投稿: 練馬のH | 2012年6月14日 (木) 08時45分
ここまでキレイになりますか! しかも手作業で。「6年でクルマを捨ててね」という似非エコ社会への、みごとな批評になっていると感じます。
投稿: 上京FMt | 2012年6月14日 (木) 10時34分