ドアの中には秘密がいっぱい(マセラティシャマル:ドアの中、完全動作への道)
ほっ、只今ようやく書き終わりました。さすがにちょっと放心状態ではありますが、「花金」の夜を謳歌する皆さんはこれからのひとときを当ブログでお楽しみください(とは云ってもこの”本ネタシリーズ”、ウチのヨメには「ちっとも、ワケがわからない」と大不評なんですけどね:笑)。
一昨日、デント作業のためにはずした、ウインドーレギュレーターを分解して洗いましょう。左側写真は「右ドア用で、窓が全閉状態(一番上まで上がってる)」、右側写真は「左ドア用で、窓が全開状態(一番下まで下がってる)」になっております。
あー、ホントに今日は、もう朝から足腰が立たないなー。なにしろ、ここ一週間は中腰かソンキョの姿勢で一日中過ごしておりますので、足が伸ばせなくなっております。というわけで気持の方は「ファイト!ふぁいと!」でありますが、ヘタりこんで作業することとします(笑)。
まずは、窓が一番下まで下がってきた状態のときにその衝撃をイッテに引き受ける「ストッパーゴム」をはずします。
本体のスキマから覗いてみますと、あー、結構ゴツくサビが出てるなというコトが分かります。いきなり、もっとヘタりこみそうになりました(泣笑)。
はい、続いては駆動モーターユニットをとりはずします。先の太いプラスドライバーで3本のビスをはずしていきますと、簡単に分離します。
モーターの軸は「□」断面のダボとなっており、相手のギアの中心にある四角い孔に合わせて入っています。
あー、なんかグリスもゴッテリとカタまってそうだなー。
今度は電気ドリルで、ストッパーのステーを固定しているリベットをモミ取ります。
ここが溶接されていないというところがミソでして、このレギュレーターユニットに分解清掃の余地を与えてくれています。
コレをはずせば、いよいよ当ブログでは毎度おなじみの「毛虫状のバネ部材」を引き抜くコトが出来ます。
うわ、固ってー!コシ抜けのワタシにはコタえる手ごたえ。モーターはずした状態でこんなでは、まともに動作するわけがありません。
分解前も一応動くことは動いていたのですが、特に「上り方向」では、かなり苦しそうなスピードでしたから。なにしろどうにか引き抜きまして撮ったのがコノ写真。
さあ、洗おう。ガソリンを予め全体的に掛けておき、しばらくして、「ワコーズBCジャンボパーツクリーナー」を文字通り「湯水のごとく」噴射して、マイクロファイバークロスに汚れを吸い取らせていきますが・・・まー、ホントに今日のは久しぶりにゴツい汚れ方です。「じゃぶじゃぶ掛けてはニギニギ」の繰り返しで、少しずつ進んでいくしかなさそうです。あー、もうホントに今日はキツいわー。首筋までヘンな痛みが出てきちゃったよ。
格闘する事、二時間半。ようやく毛虫達が本来の色を現してくれました。
使用したパーツクリーナーは本日ここまでで8本。昨日までのドアラッチ洗いやドア内部洗浄には既に2本をカラにしておりましたので、ワタシの使用分だけで計10本。
場内ではマセラティ222SRのエンジン分解整備中。そっちでもバカバカ使っているようなので、あっと云う間に段ボールひと箱分は無くなってしまいます。
ワコーズの営業さんたちからは「なんで、こんなにBCジャンボ減るのがはやいんですか、ひょっとして飲んでるの?(笑)」と冗談が出るくらいにウチはコレの使用量が異常に多い。
そんなこんなで、モーターも、レールユニットもすっかりキレイになりました。
とにかく、劣化グリスと、錆とホコリと泥の集合体みたいな汚れですから、コレをきっちり落とすのは容易ではありませんでした。まあ、製造後20年経過しているモノですから、そこは仕方がありませんね。こうして手入れをして完璧な調整を加えたモノであれば新品を超える動作スピードを出すコトがまだまだ可能です。
洗いあげた「モーター軸取付部を拡大してみてみましょう。ここに顔を出しているギア中心部はグリス漬けになっているので、サビが出ていませんね。でも表面の感じを見たところでは、焼き入れ後に表面処理がされていないか、リン酸皮膜処理(俗に”黒染め”という安価な表面処理方法)程度の処理がされているかといった体なので、グリスが切れて水が浸入すればひとたまりもなく錆がギア歯を侵します。
で、ここから先の「レギュレーター組み立て工程」は、いつものように「企業秘密(笑)」につき、お見せ出来ません。申し訳ない!
一旦ドア内部に再組み立ての終わったレギュレーターユニットを入れておき、今度はドアウインドーを入れる準備をいたします。水切りモールや、ドアピラーモールはフェルト状の起毛処理が施されておりますので、そこに堆積した20年分のしつこいホコリ汚れを「いろんなコトをして(とは云っても写真ではただ拭いてるだけに見えるけど:笑)」除去していきます。
ドアの内部でウインドーの前後ガイドとなる「ランチャンネル」も、同様にキレイになるまで清掃をいたします。
で、このあとウインドー入れる前に「○○して」、ウインドーを入れて「△△して」、ランチャンネルを「××して」、各部を・・・、すべて企業秘密(笑)。ともあれ、左右のドアウインドーはスーパースピードで動作するように復元いたしました。あー、とりあえずホッとした。
これはドアを室内から開閉する時に動作させる「インナーノブ」の機構部分です。
単品にバラして動かしてみると結構手ごたえのあるリターンスプリングが入っているのですが、この部材そのものと、各リンクとそのジョイント部、そして昨日洗っていた「ドアラッチユニット」などなどの摺動部位がもつ摩擦抵抗が合わさると、ドアインナーノブを引きあげた後に手を放しても戻らないという症状が現じます。コレは他からはじめてウチにやってきた「四角い系ビトルボ」の場合に大概そうなっています。このシャマルでは、特に問題はありませんでしたが、マイクロ・デポではこれもルーティンですから、キチンと処置をしております。とにかくキレイに一旦脱脂し、そのあとにグリス漬けにします。時々自分でも何をやっているのか分からなくなる場合がありますが(笑)。とことん動作のタッチにまでこだわって行ったらこんなになっちゃいました(こんなワタシにダレがした:泣)。
またまた、地味なヤツの仕上げ。ドアの下になんとなく付いているフラップです。
でも、この部材、端っこの方がドアを開いた時に結構目に入ってくるんですよね。
で、この工程もルーティンです。今回のシャマルでは、運転席ドアの後方、二個のクリップが欠損したらしく、既に社外品でなんとなく留めてありましたが、どうもその前には接着剤か、両面テープで貼っていたらしく、強力な糊の跡が残っており、その部分が見えてしまいますと非常に格調が低いです。
で、ヤッパリとことん除去することに(笑泣)。「色んなコトして(とは云ってもヘラでこすってるだけに見えるが:笑)」キレイにとれました。この15センチの区間を突破するのに40分、アホです。
気が付けばすっかり夕方になってまいりました。なんだか天候もアヤシクなってきたので先を急がねば。作業に集中してたらカラダの痛みも峠を越えたらしく、段々と調子が上がってきましたよー!
キレイになったフラップにはたっぷりの「オートグリム・ビニールアンドラバーケア」をぶっ掛けてしばらく放っておきます。
完全にヨゴレ部分を除去してこそ、高級浸透艶出し剤はその本当の真価を発揮するのです。写真撮るだけなら、ぶっ掛けるだけでもまあまあ雰囲気が出るんですけどね、しかしながら現物を比べると歴然とそのオーラ感が違います。「超絶」への道のりは遠いのです。
これは、ウインドーレギュレーターのコード。オリジナルの「まったく防水防塵効果の無い」絶縁カバーは撤去し、導通性能の低い「平ギボシ」もやめ、しっかりした表面処理を施された「国産の丸ギボシ」に変更しておきます。まずは、カバーをはずし、一本ずつ作業をいたします。ワタシはご存じの様に「アホ」なので、一気に切ってしまうと間違いの元です。立場上、作業中に電話を取ることもありますので、「どこまでやってたんだっけ?」となってしまってはイケませんからね。
コードを切る→カバーを先に入れておく→コード先端の皮膜を剥く→コード尖端部とギボシ接合部を接点復活剤で洗う→電工ペンチでギボシを接合→ギボシ同士を結合→カバーを結合→最後にコード周辺をシリコンオフで清掃・・・これがワンサイクルです。
だけど、この「デ・トマソ期マセラティ」の場合は、このドア内部に限らず、全身にコレをやらなければならない部分が散りばめられておりますので、「塵ツモ」になるとコレは結構大変ですよ。「なーんだ簡単ぢゃん、自分でヤレば安いし」と思っているアナタはやってみそ(笑)。
こんどは、「リモコンドアミラー」のカプラーです。すでにキレイに清掃は終わっておりましたが、結合時には接点復活剤を噴射して一回組み、「ぎこぎこ」しながらまたはずし、もう一度噴射して洗浄し再結合します。白サビなどによる腐食部位を少しでも除去するための気休め的な方策です。・・・で、ここまでやったら、ドア内部のハーネスをすべて這わせて固定していくのですが、ここも「企業秘密」なのでお見せ出来ません。・・・まあ、現物見ればわかりますよ。とにかく「濡れない、浸みない、音出ない、無理ない、無駄ない、干渉しない」が合言葉(ヒント)。
あー、もう今日は写真がヤケに多いな(撮るんぢゃ無かった:笑泣)。
ドア灯だけでも、ヤルこと「てんこ盛り」。
まずは、シールドゴムの状態をチェック。このシャマルのは最高の状態でそのまま生かせる。
オリジナルの電球は無駄に光量ありすぎ(別名:便所の100W)で、長時間点灯させると赤い樹脂レンズ溶かしてしまうほどなので、躊躇なく撤去します。
続いては「ギボシ」を良質なメッキの国産品に変更していきます。この電球ホルダーも状態が良好なので、そのまま洗浄して使うコトにいたしました。
「ギボシ」を交換し、ホルダー内部を接点復活剤で洗浄。旧いギボシを除去し新しいものをホルダーに結合します。
電球はもちろん低ワット化。ちょっとオリジナルより背が低くて可愛いヤツです。
一旦電源を入れて、点灯をチェックします。チェックが済んだらシールドゴムをホルダーに被せます。
ここでの被せ方にはちょっとしたコツがあるのですが、ソレも「企業秘密」とさせて頂きます(笑)。
実はこのシールドゴム、全世界欠品中状態が長らく続いており、入手が難しいものです。たいていの場合は、20年の間の劣化で割いたようにボロボロになっているのが普通ですが、前述のようにコレは非常に状態が良いものです。さらにビニールテープで表面を覆い隠し、そのままコードまでヒト巻きで巻いていきます。後部からの水侵入を完全に遮断するためです。これも当店ではルーティンになってます。
すべてが完了したので、既にボディ側に装着してある樹脂レンズの裏側からさし入れます。ゴムシールドとレンズがしっかりと密着するように固定出来れば完成です。
電源を入れ、最終の点灯チェックをいたします。コレでも夜間充分な光量です。ここは、電球の交換をするためにドア内張り下部をすべてはずさないとならないところです。いっけんどうでも良さそうなモノですが、気になるヒトにとっては一大事(だって、夜キレイなんですよコレ:笑:気になってるヤツってオレ?)。でも、交換は内張りはずしが前提。たったコレだけのことに斯くの如くに手間を掛けているのは、お納めした後のオーナーさんの利便性と、後のトラブルシュートスピードの短縮化をとことん追求した結果。つまるところマセラティを何台徹底的にバラしてきたかが、専門店の真価。もういい加減に「デ・トマソ期マセラティ腐敗神話(不敗でないところが悲しい)」は忘れてください。既に必勝法は、ほとんどすべての分野で開発してあります。現在在庫にある「マセラティ430」なんかも、すべて今日のシャマルと同じ工程を踏んでいるんですよ(しかもドアは4枚もあるから工数は倍掛かってる)。既に何人ものお客さんから(特にGoo経由で)「価格問い合わせ」を頂いておりますが、皆さん躊躇している様子。思い切って飛び込んでは頂けないものかしらねー(泣笑)。
明日は土曜日。待ってますよー皆さん(コレ3時間掛かって書きあげたんですから:笑泣)!さあ、ワタシも無罪放免。帰って「花金」ヤルことにいたしましょう。おやすみなさーい!
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本来のお仕事に加え3時間の書き上げ、大変恐れ入ります。
「完璧な調整を加えたモノであれば新品を超える動作スピードを出すコトがまだまだ可能」
これは名言だと思います。
例えはチョイと違うが「うさぎとカメ」、やはりまじめにコツコツ匍匐前進が
最短最速ゴールになるのだという事をつくづく感じました。
日曜まであと一日、頑張ってください。
投稿: Wさま | 2012年6月 8日 (金) 23時16分
期待に違わぬお仕事に頭が下がります。
この作業を専門店でない所で実現しようとしたらとんでもない事になるでしょう。
また、「デ・トマソ期マセラティ腐敗神話」、私の読んだりしたもののほとんどは「完調なマセラティ」に乗ったことの無い人が書いているとしか思えないものばかりです。
この点は専門店の車でしっかりと恩恵を受けられればと思います。
430、リアのホイールアーチの造形がたまらないです。
投稿: nearco | 2012年6月 9日 (土) 00時01分
うーむ。昨日は写真24枚、今日は53枚!!見応え十分です。「魂は細部に宿る」。それ以上に、「魂は見えないところに宿る」のでしょう。小学生の時、全校で校内掃除があり、校舎北側の裏の掃除担当になり、監督(さぼっていないかの見張り)の先生がいなくなっても、コツコツ綺麗に掃除していたら、担任にえらく褒められたことを思い出しました。本人は褒められようというのでなく、なんだか綺麗にしたくなって夢中でやっていた小学生だったのですが。。。どうせ見えなくなるドアの中をコツコツ綺麗にしているタコちゃんの姿と重なってしまいました。誰に褒められる訳でなく、そうしないと気が済まない(商売抜き)性分なのですが、そうして超絶ビトルボマセラティが完成するのですね。更に私のモットー「痒いところに手が届く」がデポ製マセラティに具現化されています。
投稿: 練馬のH | 2012年6月 9日 (土) 01時08分
この手の工程を見ていると、自分の車でもないのに
ワクワク嬉しくなってしまうのは何故なんでしょう(笑)
その昔、福野礼一郎氏が、中古で買ってきた自分の車を
徹底的に仕上げた工程をつぶさに紹介した本がありましたが、
あれを読んでいた時も、同じ感覚にとらわれた覚えが有ります。
何でしょうね、この感覚は。
感動するのは勿論なのですが、なんだかワクワクしちゃうんです。
因みに、福野氏の仕上がった車からはその時同行した編集者によると、
車内からは新車の匂いがしたそうな・・・。
こりゃ、今度の車は絶対に禁煙車にしなければなりませんな(笑)
投稿: Hでございます | 2012年6月 9日 (土) 04時07分
自分のクルマも近い過去に同じように手をかけられていると思うと、あだやおろそかには走らせられません。
430、カッコいいですけどねえ。
投稿: おぐ | 2012年6月 9日 (土) 04時29分
これがルーティンワークですか。気の遠くなるような…一口に「超絶仕上げ」と言っても、背後には途方もない作業が秘められているわけですね。しかもこれまでにバラしたマセラティによって獲得された秘密のノウハウを駆使して。東に足を向けて寝るのが申し訳なくなってきました。
投稿: 上京FMt | 2012年6月 9日 (土) 09時13分
自分の車もこの様な、地道で、企業秘密満載の工程を重ねてきたのかと思うと
本当に頭が下がります。またそんな車に乗れることも幸せです。
週末だし、雨が上がったらどこか行こう!
投稿: woodykida | 2012年6月 9日 (土) 16時42分
ドアの中には秘密がいっぱい、って何なの??
馬鹿みたいだけど、ほんとに秘密がいっぱいじゃないか!!
この量、写真と事細かな記事。
俺はものすごくうれしいけど、とても建設的な事とは思えない。
何度も言ってるように、ブログの中だけで埋もれさせていいの!!??
だれかまとめてくんないの??
三男は英訳してくんないの??
やんなさいよ。
アホとしか言いようがないけど、後世に絶対残る。
これこそがカルトな世界だと思うなぁ。
投稿: りゅたろう | 2012年6月11日 (月) 19時41分